石澤敦のメディカルインフォ

脂質異常症について(1)

脂質とは

・食品に含まれる、体になくてはならない五大栄養素の一つ。
・水に溶けない物質で、体内では水の次に多く含まれる。

脂質の一に当たりの摂取目安量

カロリー全体の20〜30%

脂質1g=9Kcal

  • 18~49 歳・男性:58〜88g
  • 18~49 歳・女性:43〜66g

脂質の種類

脂質にはいくつかの種類があり、次の3つの種類に大別されます。

脂質異常症とは

  • ① 血液に含まれるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド:TG)などの脂質が、一定の基準を超えた(高値または低値)状態をいう。
  • ② 血液中に脂質が多く(または、物質によっては低く)なると、動脈硬化を引き 起こし、結果、心筋梗塞や脳卒中の原因となる。
  • ③ 脂質異常症の基準値は、疫学的な研究結果に基づき、冠動脈疾患(心筋梗塞等) や脳卒中発症が有意に高くなる値を基準値として設定している。
  • ④ この基準値が直ちに治療の基準となるわけではなく、その他の様々な要因(因子)との兼ね合いで、将来、どの程度冠動脈疾患になり易いかによって治療方針が決定される。
① コレステロール
  • コレステロールは水に溶けないため、リポ蛋白というカプセルと結合し(リポ蛋白という衣に包まれて)血液中を移動する。結合するリポ蛋白の濃度により、大きく2種類のコレステロールに分類される。

LDL(低比重リポ蛋白:low density lipoprotein)コレステロール(LDL-C)
HDL(高比重リポ蛋白:high density lipoprotein)コレステロール(HDL-C)


比重の低いLDL-Cは、細胞内に取り込まれ、ホルモン産生、細胞膜の形成などの役割を担うが、必要以上に多量に存在すると血管壁に取り込まれ沈着、蓄積し、炎症反応を起こして動脈硬化の原因となる。そのため、悪玉コレステロールとも呼ばれる。
一方、比重の高いHDL-Cは、組織に蓄積した余分な LDL-C を回収し肝臓に 運び除去したり、その他の様々な作用によって動脈硬化を防ぐことから、善玉コレステロールと呼ばれている。

② 中性脂肪(トリグリセライド)

※トリグリセライドの役割

脂質異常症診断基準(空腹時採血)

上述の病態を踏まえ、脂質異常症の診断基準が定められている。
空腹時:10時間以上の絶食採血。カロリーのない水分(水やお茶)は摂取可。

※追記事項(1)

※追記事項(2)


採血のタイミングについて

脂質異常症の基準値は空腹時採血が原則とされているが、実臨床で経過を見ていく場合、毎回、空腹時採血を施行することは難しく現実的とは言えない。 また、総コレステロールや HDL-C コレステロールは食事の影響をあまり受けないことが知られている。 2016年、欧州動脈硬化学会と欧州臨床検査医学会から、


  • ・スクリーニング目的の脂質検査は非空腹時でよい。
  • ・TG は食後優位に上昇するため、TGカットオフ値:175mg/dlとする。 などの勧告が出された。
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