石澤敦のメディカルインフォ

認知症総論(2)

認知症診断の進め方(基本的事項)

(1)問診・臨床症状
  • ・症状の経過、“急に”あるいは数か月〜年単位で“徐々に” 起こったのか?
  • ・併存疾患の有無:高血圧症、糖尿病、脂質異常症は、それ等自体が認知症のリスク因子であるとともに、脳血管障害(⇒脳血管性認知症)のリスク因子でもある。循環器系疾患(心房細動、不整脈、冠動脈疾患⇒脳塞栓症のリスク因子)

“物忘れ”に関わる具体的な問診

加齢による物忘れと病的認知障害(認知症)の臨床症状による見極め方
人は誰でも、加齢とともに物忘れの症状が出現する。
“加齢による物忘れ=正常老化”か、治療の対象となる病気としての“認知症”か、を判別 することが必要である。しかし、認知症の進行は緩やかであるため、その分岐点がどこにある かを見極めることは実臨床では簡単ではない。

認知症の“始まり”と症状
「加齢による物忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いのポイント

★物忘れのために日常生活に支障をきたしているか。

  • 日常生活で重要でないことやタレントの名前を思い出せないなどは加齢によるもの忘れの範 疇だが、自分の経験した重大なことがらや大事な約束・予定を忘れるのは認知症の可能性が 高い。

★本人が忘れっぽくなったことを自覚しているか。

  • 最初はもの忘れを自覚していても、次第にもの忘れしていることに気づけなくなり、話の中で辻褄を合わせようとするのは認知症の可能性あり。

★物忘れの範囲は経験全体に及ぶか。

  • 経験の一部を忘れるのは加齢による物忘れの範囲だが、経験全体を忘れるのは認知症の可能 性あり。前日の食事の内容・メニューの一部を思い出せないのは加齢による物忘れの範囲だ が、食事をしたこと自体を思い出せないのは認知症の可能性あり。
(2)認知症の可能性を「日常生活の障害」で評価する方法

① Barthel Index(バーセルインデックス):日常生活動作(ADL)の機能的評価

  • ・生活する上での最低限必要な基本的動作 10項目に関する質問
  • ・各項目に付与された点数の合計で評価

② IADL(Instrumental Activities of Daily Living): 手段的日常生活動作

  • ・Barthel Index より高度な生活手段能力を検査する方法で、全体として独居生活機能を評価する方法(Lawton、M,P)。
  • ・男性5項目、女性5項目について評価(各細項目:0点または1点で点数化) 満点:男性:5点、女性:8点 (詳細は成書に譲る)

※女性には、食事の準備、家事、洗濯の項目が割り当てられているが、現在、女性の社会進出により家事を応分に負担する男性も増えており、今後、性差を問う必要性はないかもしれない。

(3)神経心理学的検査(認知症のスクリーニング検査)

臨床的に病的認知障害があるかどうかを診断するために神経心理検査が行われている。 信頼性が高く、比較的短時間で評価可能な検査として、「改訂長谷川式スケール」「MMSE」が、外来、診療所レベルで汎用されている(その詳細は成書に譲る)。
※改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R):Hasegawa`s Dementia Scale for Revised ※ミニメンタルステート検査(MMSE):Mini Mental State Examination

MMSE と HDS-R の比較
各項目が主にどのような認知機能を反映しているか?

神経心理検査を補完する検査として:“時計描画テスト”

※時計描画テストのFreedman法評価項目

認知症の病型(認知症の原因となる病態・疾患)

認知症には、四大認知症と言われる、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症以外にも、多くの病型、病態が存在する。また、それぞれの病型の頻度については、報告者によって様々である。

認知症(病型)の種類別割合
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