肥満症(1)
肥満症とは
肥満と肥満症の違い
「肥満」は、体重が多いだけではなく体脂肪が過剰に蓄積した状態であるが、実臨床で体脂肪量を簡便、正確に測定する方法がないため、「BMI:Body Mass Index=肥満度」という指標が用いられる。
1. 脂肪組織に過剰な脂肪が沈着した状態。
その定義は、BMI=体重(kg)÷身長(m)が25以上とされる。
但し、「肥満」自体は病気ではない。
2. なぜ、BMI≧25が問題か?
BMIが25を越えると、
①肥満関連健康障害の主要3疾患の有病数の平均値が1を越える。
- ●耐糖能障害(糖尿病)
- ●脂質異常症
- ●高血圧症
3. 「肥満症」とは、
肥満に起因ないしは関連する、減量を必要とする健康障害を合併するか、その合併症が予測される場合を言う。
即ち、「肥満症の定義」は、
- ■BMI に基づく肥満の判定(BMI≧25)に加え、
- ■肥満に関連する 11種類の健康障害のいずれかを有するか(下記参照)、
- ■高リスク肥満である内臓脂肪型肥満が存在する場合。
脂肪細胞(組織)の働き
- ●脂肪細胞は、生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌するホルモン臓器である。
アディポ(adipo-:脂肪)サイトカイン(cytokine:生理活性物質)。 - ●アディポサイトカインには、動脈硬化を促進する(悪玉)アディポサイトカインと、動脈硬化を予防する(善玉)アディポサイトカインがある。
脂肪の蓄積部位による違い
皮下脂肪蓄積に比べ、内臓脂肪蓄積(内臓脂肪型肥満)の場合、多くの生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧等々)発症のリスクが高い。
肥満症の定義
肥満症を定義する病態:内臓脂肪型肥満(と脂肪肝)とは?
肝臓では、脂肪酸から中性脂肪を作り肝細胞に蓄積、エネルギーとして必要な分を放出するが、 使うエネルギーよりも生成される中性脂肪が多いと、余剰分が腹腔内脂肪として蓄積され(内臓脂 肪型肥満)、同時に肝臓にも脂肪が蓄積される結果、脂肪肝が成立する。
全肝臓細胞の30%以上が脂肪化している状態を脂肪肝という。
1960年以前、脂肪肝の原因の多くは、過度の飲酒に伴うアルコール性肝障害が中心であったが、 近年では、肥満が原因の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が急速に増加している。
※NAFLD:non-alcoholic fatty liver disease
⇒単純性脂肪肝と NASH(nonalcoholic steato-hepatitis ⇒肝硬変、肝癌への移行)
(1)内臓脂肪蓄積(内臓脂肪型肥満)の評価法
- ●臨床的評価:臍周囲径測定
男性:85cm以上
女性:90m以上 - ●腹部CTによる内臓脂肪面積測定
臍通過断面で、100㎠以上
(2)脂肪肝(内臓脂肪型肥満の1病型)の診断
- ●画像検査:超音波や腹部CT
・腹部超音波検査:肝腎コントラスト/肝臓の深部エコー減弱/肝血管の不明瞭化
・腹部CT:脂肪沈着による肝臓のCT値(HU)の低下
※肝臓のHU(低下)≦脾臓のHU(肝HU÷脾HU≦0.9) - ●血液検査:
・ALT、AST が 50〜100 前後に上昇
かつ、①ALT≧30
②ALT>AST(AST 優位)
・他に、γ-GTP、コリンエステラーゼの上昇