石澤敦のメディカルインフォ

血管性認知症(VaD:Vascular Dementia)(1)

血管性認知症とは?その概念

・脳梗塞や脳出血などの脳血管障害に起因して起こる認知症の総称。
・アルツハイマー型認知症(AD)に次いで有病率が高い。
・脳卒中後遺症の神経脱落症状に加え、実行機能障害などの認知機能障害を呈する。

血管性認知症の診断のポイント
  • ① 認知症がある。
  • ② 脳血管障害(CVD)がある。
  • ③ 上記両者に因果関係がある。
  • ⇒ 画像診断で病巣を確認できる脳血管障害が確認でき、そのイベント後に認知症が出現していること。

脳血管障害それ自体の病態は多彩であり、その因果関係を証明することは必ずしも簡単ではない。

特に高齢者では、「他の認知症」の病態が併存することも多く、それらの病態との境界を明瞭に分別することが困難な場合も少なくない。

血管性認知症の診断基準

いくつかの診断基準が提示されているが、それらの診断一致率は必ずしも高くない。
ここでは、現在汎用されている2つの診断基準を示す。


(1)NINDS-AIRENの診断基準:(NINDS:米国国立神経疾患・脳卒中研究所)

(2)DSM-5:(米国精神医学会診断統計便覧第5版から改変)

脳の動脈

頭蓋内動脈は、おおまかに大脳半球を還流する前方循環と、小脳や脳幹を還流する後方循環とに分けられる。


脳血管障害とは?

脳血管障害とは、大きく分けて頭蓋内の血管(多くは動脈が関与するが、時に静脈の関与も含まれる)が何らかの原因で破綻し脳内出血を起こす病態と、動脈が狭窄あるいは閉塞することで脳血流が途絶え脳組織が壊死・破壊される脳梗塞の病態とがある。
また、頭蓋内局所の動脈が関与する病態とともに、心臓や全身疾患が原因で脳への血流が著しく低下して発症する血流障害の病態も存在する。

脳血管障害の分類:(NINDS-AIREN)


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