石澤敦のメディカルインフォ

脂肪肝の臨床(肥満症、もう一つの側面)

脂肪肝関連疾患の診断の進め方

脂肪肝があり、肝障害が確認された場合の診断の進め方の概略を示す。

NASHの確定診断

一般臨床において、常習飲酒や他の肝疾患が否定され、画像診断(腹部CTや腹部超音波)で脂肪肝が確認された場合、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と診断される。
次のステップとして、単なる脂肪沈着のみのNAFL(Nonalcoholic fatty liver)か、肝炎を起こしたNASH(Nonalcoholic steatohepatitis)であるのか、さらに進行した病態としての肝線維化肝硬変(既に肝癌)であるのかを判断する必要がある。
このような病態の確定診断は、生検(肝臓の組織を採取)によって得られた組織の病理組織検査によって行われる(肝生検)。
その判定は下記のような評価によって下されるが、その詳細は成書に譲る。

NASHに関わる、非侵襲的検査

NAFLDの病態からどの程度NASH(肝線維化)に進行しているかを診断するために、重大な副作用が起こらないとは言い難い侵襲的検査である肝生検を全ての症例において行うことは現実的ではない。そこで、最近では、非侵襲的検査として次のような方法が導入されている。

① 静脈採血で得られた血液データーで線維化の程度を判断(予測)する。
② MRIや超音波等の画像検査を用いて線維化(肝硬度)の有無・程度を判定する。

血液所見による肝線維化の評価

1. FIB4-index

・肝線維化の程度を推定。
・年齢、AST、血小板、ALTを順次数式に投入して得られる値。
・[年齢×AST(IU/L)]÷[血小板(万/μL)×√ALT(IU/L)]
 ⇒スマホやパソコンで「fib-4」と入力すれば自動計算してくれるサイトあり。

2. M2BPGi糖鎖修飾異性体

M2BPGi:Mac-2結合蛋白(M2BP)糖鎖修飾異性体(Mac-2 binding protein glycosylation isomer)
・肝線維化が進行すると、M2BPの蛋白質部分は変化しないが、糖鎖構造部分が変化するという性質を有する。
・この変化した糖鎖のみに反応するレクチンを用いて、糖鎖に変化の生じた異常蛋白質を検出する。
・肝線維化の進展度を反映し、ステージの上昇に伴い高値となり、肝生検との一致率は80%以上である。
・M2BPGiによる肝線維化のステージ判定基準

3. 血小板数

・慢性肝炎から肝硬変に移行すると、脾腫により脾機能が亢進し徐々に血小板が減少する。
・血小板の前駆細胞の増殖および分化に関与するトロンボポエチンは肝臓で産生されるが、慢性肝疾患患者ではトロンボポエチン産生が低下し、その結果、血小板が減少する。
・血小板数によって肝線維化を予測可能である。
・肝線維化進展すると、19万/μL以下となる。

画像診断による肝線維化の評価

非侵襲的に肝線維化を評価する方法として、超音波による検査とMRIによる検査が行われている。
これら等は基幹病院や肝臓専門医で行われる検査であり詳細は成書を参考にしていただきたい。

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